スレート屋根(化粧スレート)は軽量で安価な屋根材なので、日本の住宅の屋根に多く採用されています。一方で、紫外線や雨風の影響によって経年劣化を起こすため、適切な時期でメンテナンスを実施しなければなりません。
そこで本記事では、スレート屋根が劣化する原因や劣化症状、劣化した場合のメンテナンス方法について徹底解説します。
スレート屋根が劣化する原因
スレート屋根が劣化する要因は、大きく経年劣化と自然災害、微生物の繁殖の3種類に分類することができます。スレート屋根の工事をする際には、事前にどのような劣化原因があるのか理解しておくことが重要です。
そこでここからは、スレート屋根が劣化する各原因の特徴について解説します。
経年劣化
スレート屋根はセメントに繊維素材を混ぜた基盤に、表面を塗装で処理して仕上げている屋根材です。
この表面の塗装部分は紫外線や雨風の影響で徐々に劣化が進行し、色あせや退色から始まり、最終的には塗膜が剥がれて基盤がむき出しになります。
塗装は基盤を保護する層のため、塗装の剥がれた状態では紫外線などの影響を直接受けるようになり劣化が促進します。
自然災害
スレート屋根が劣化する要因として、自然災害による影響も挙げられます。
例えば、台風・強風時の飛来物、テレビアンテナの倒壊で屋根材にひび割れが起きたり、屋根材自体が損傷してしまうケースもあります。
また、昨今では急な天候不良によって雹が振るケースもあります。雹が降った場合、強い衝撃がスレート屋根に加わってしまうため、スレート屋根が損傷し劣化が進行します。
微生物(カビ・藻)
スレート屋根を劣化させる要因として、カビや藻などの微生物の繁殖が挙げられます。
カビや藻などの微生物は水気の多い場所で繁殖するため、スレート屋根で繁殖すると屋根材が乾燥しにくくなり、水分を滞留させてしまう要因になります。
これらの水分は屋根材を傷めてしまう原因になるので、劣化が進行してしまうわけです。
スレート屋根の劣化症状について
スレート屋根は紫外線や自然の影響を受けて、段階的にさまざまな劣化症状が発生します。劣化が進みすぎてしまうと、思いのほか修理費用がかかってしまうこともあるので注意しましょう。
ここでは、具体的にスレート屋根にはどのような劣化症状があるのか?を解説します。
①色褪せ・退色
スレート屋根で最初の段階に起きる劣化症状が、退色や色褪せといった症状です。
スレート屋根は表面を塗装で保護しており、この塗膜の層は紫外線の影響で徐々に防水機能が失われていきます。
これが進行すると塗膜のツヤがなくなっていき、やがて色褪せや退色に繋がっていくわけです。
そのため、スレート屋根に色褪せや退色などの現象が見受けられてきたら、劣化し始めてきていると認識しておきましょう。
②コケや藻の発生
スレート屋根の劣化症状の一つに、コケやカビ、藻など微生物の繁殖が挙げられます。
経年劣化で塗膜の防水機能が徐々に失われていくことで、北側の面や木の陰になりやすい部位から微生物が繁殖し始めます。
これら微生物の繁殖は既存塗膜の性能低下を意味しているため、コケや藻の発生が確認できたらメンテナンス時期に差し掛かっているといえるでしょう。
③屋根材の変形(反り・割れ・欠け)
スレート屋根の劣化が進んでいくと、最終的に屋根材自体の反りや割れ、欠けといった症状が現れます。
防水機能が低下した屋根材は、最終的に紫外線の影響で塗膜が剥がれてしまい雨水を吸水しやすい状態になります。
この状態が長く続くことで、水を含んだ日には膨張し、晴れた日中には乾燥するといった工程を繰り返します。
これにより、屋根材自体が反り始めたり、伸縮に追従できなければ割れたり欠けてしまうこともあります。
反り・割れ・欠けなどの現象は劣化症状の最終段階にあるので、これらの症状が確認できた時点でメンテナンスを実施しましょう。
スレート屋根の劣化を放置するとどうなる?
屋根というのは普段気にしてみない部位でもあるので、思いのほか劣化が進行してしまうことが多々あります。しかし、スレート屋根は劣化を放置すると重大な被害に繋がることがあるので、注意しなければなりません。
そこでここからは、スレート屋根の劣化を放置するとどうなるのか?について解説します。
雨漏りの発生
スレート屋根の劣化を長期間放置した場合、雨漏りにつながる可能性があります。
スレート屋根というのは、下地の合板の上にルーフィングと呼ばれる防水シートが施工されています。
このルーフィングはタッカーと呼ばれるホッチキスのようなもので留め付けており、この上にスレート屋根を釘で留め付けて仕上げで葺いていきます。
基本的に雨水は防水シートがあることで防ぐことができますが、スレート材が劣化して雨水が多く滞留することで、釘やタッカーなどの金属部分から雨水が浸入しやすくなります。
これが長期間続くことで釘周辺は腐食していくため、最終的に雨漏りに繋がってしまうことがあるということです。
屋根材が飛ばされる
前項でも解説したとおり、スレート屋根は釘で下地に留め付けてある構造をしています。
しかし、雨水の影響によって釘周辺が腐食して錆びると、留め付けの強度が徐々に落ちていきます。
また、下地の木部も水の影響で膨張するため、釘本来の留め付け強度が確保できなくなることが多々あります。
これらの影響で台風や強風が吹くと、本来の留め付け強度がないスレート屋根材は飛ばされてしまう可能性があります。
スレート屋根が飛ばされてしまうと、近隣周辺に被害が及ぶ可能性もあるので注意しましょう。
スレート屋根が劣化した場合のメンテナンス方法
劣化したスレート屋根をメンテナンスする場合、劣化症状や程度に合わせていくつかのメンテナンス方法を選択できます。メンテナンスの種類によって特徴も分かれるので、事前に各修理方法について学んでおきましょう。
そこでここからは、スレート屋根が劣化した場合のメンテナンス方法について解説します。
棟板金交換
棟板金(むねばんきん)とは、スレート屋根の一番高い部分に設置されている屋根の部材のひとつです。
木部の下地の上に金属の部材を覆って取り付けられており、屋根の仕上げ工事として付けられている特徴があります。
この棟板金は下地の木部に釘で留め付けられていますが、経年的な劣化により釘が浮いたり、下地の木部が腐食しているケースがあります。
これらを放置すると強風の影響で飛ばされてしまう可能性があるので、棟板金を交換してメンテナンスすることが重要というわけです。
塗装工事
スレート屋根の表面は塗装で仕上げられているため、塗り替えのメンテナンスをすることができます。
屋根塗装を施すことで、屋根材自体をキレイにすることはもちろんのこと、屋根材表面の防水性を高めることができます。
屋根は外壁に次いで面積の広い部位のため、建物全体の印象を決める上で非常に重要な場所でもあります。そのため、屋根塗装でリフレッシュすると意匠性が大幅に向上するメリットがあります。
ただし、現状で雨漏りが発生しているスレート屋根の場合、塗装工事で問題を解決することはできません。
そのため、劣化症状が進行して雨漏りが発生している場合については、次項以降で解説するカバー工法や葺き替えなど、別のメンテナンス方法を採用しましょう。
カバー工法
カバー工法(重ね葺き工法)とは、既存の屋根の上に新しい屋根を造り込む工事方法です。
スレート屋根の傷みが進行していて塗装のメンテナンスでは難しい場合も、カバー工法なら問題なくメンテナンスできます。
既存の屋根材を撤去する必要がないので、工事日数が短く、工事費用を抑えることもできます。
昨今スレート屋根のメンテナンスで主流の方法なので、下地が傷みすぎている場合を除き、おすすめのメンテナンス方法といえます。
葺き替え工事
葺き替え工事とは、現状のスレート屋根を全て撤去して、新たな屋根材を葺き直す工事方法です。
屋根材を全て撤去するので、下地からやり替えることができます。これにより、腐食した下地も直すことができるほか、屋根の重量が増加せずに耐震性の観点からもメリットがあります。
一方、既存屋根の撤去と産業廃棄物処理費用がかかるので、工事日数が最も長く、工事費用も他のメンテナンス方法と比較して高額な傾向にあります。
そのため、下地の腐食が激しい、またはコストがかかってもしっかりと修理したいという方におすすめのメンテナンス方法です。
まとめ
今回の記事では、スレート屋根の劣化症状とメンテナンス方法について詳しく解説しました。
記事の要約は以下のとおりです。
- 屋根が劣化する原因は、経年劣化、自然災害、微生物の繁殖
- スレート屋根の劣化症状は色褪せ・退色、微生物、屋根材の変形
- 傷んでる状態を放置すると雨漏りが発生する可能性がある
- 痛んだ屋根材は飛ばされる可能性もあるので注意する
- 軽度なメンテナンス方法は、棟板金交換や塗装工事
- 痛んでいる状態は、カバー工法と葺き替え工事がおすすめ
半永久的な寿命の粘土瓦とは違い、スレート屋根(化粧スレート)は経年劣化の影響を強く受ける屋根材なので、適切な時期にメンテナンスを行いましょう。