太陽光や雨風など、過酷な環境下から住宅を保護している屋根も経年劣化するため、定期的なメンテナンスをしなければなりません。
しかし、屋根工事と言ってもさまざまな種類があるため、目的に合った修理方法を選ぶことが重要です。
そこで本記事では、そもそも屋根工事にはどのような種類があるのか?を詳しく解説します。また、種類別の特徴や一般的な費用相場まで紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【基礎知識】屋根工事の種類と費用相場の比較表
以下の表では、屋根工事の種類と特徴、一般的な費用相場をまとめました。
屋根工事の種類 | 特徴 | 費用相場 |
葺き替え工事 | 現状の屋根を撤去して、下地や不具合箇所、屋根を新しく交換する工事 | 120~200万円 |
葺き直し工事 | 現状の屋根を再利用して、下地や不具合箇所を新しく交換する工事 | 100~180万円 |
重ね葺き工事(カバー工法) | 現状の屋根の上に、新しく屋根を重ねて造り込む工事 | 80~150万円 |
塗装工事(屋根塗装) | 現状の屋根の表面を新しく塗り替える工事 | 20~50万円 |
防水工事 | 陸屋根の劣化した防水層部分を新しく改修する工事 | 50~120万円 |
漆喰工事 | 剥がれた漆喰や劣化した漆喰を塗り直す工事 | 10~30万円 |
棟(瓦・板金)工事 | 屋根の棟板金の交換や棟瓦を積み直す工事 | 10~20万円 |
部分的な差し替え工事 | 部分的に破損した屋根(瓦やスレート)を差し替える工事 | 10~20万円 |
※上記は本体工事のみです。仮設足場代、太陽光発電の撤去債設置費用、アンテナ撤去債設置費用などは含まれていません。
【全面改修編】大規模な屋根工事の種類と特徴を知ろう!
全面改修を行う大規模な屋根工事の種類は以下のとおりです。
- 葺き替え工事
- 葺き直し工事
- 重ね葺き工事(カバー工法)
- 塗装工事(屋根塗装)
- 防水工事
ここからは大規模な各屋根工事の種類や特徴について詳しく解説します。
①葺き替え工事
葺き替え工事とは、現状の屋根を撤去して新しい屋根に交換する工事です。
葺き替え工事のメリットデメリットは以下のとおりです。
- 下地からやり替えることができる
- 新品同様の見た目になる
- 耐震性も向上するので安心
- 別の屋根材に変更することができる
- 雨漏りが解決する
- 他の屋根工事と比較して費用が高額
- 産業廃棄物処理費用がかかる
- アスベスト含有の屋根材だった場合、処理費用が別途必要
- 屋根撤去後に雨が降ると雨漏りするリスクがある
葺き替え工事は下地からやり替えることができるので、建物としての寿命も延ばすことができます。
また、瓦屋根から金属屋根、スレート屋根から金属屋根といった具合に、屋根材自体を変えることができるのも大きなメリットと言えるでしょう。
一方で、既存屋根の撤去・処分費用が必要になるほか、アスベスト含有の屋根材だった場合は処理費用が高額になる傾向にあります。
②葺き直し工事
葺き直し工事とは、現状の屋根を生かして下地や腐食箇所を交換する工事です。基本的に瓦屋根の場合にのみ採用できる工事なので注意しましょう。
葺き直し工事のメリットデメリットは以下のとおりです。
- 屋根材を再利用するためコストを若干抑えられる
- 下地や腐食箇所を新しく交換できる
- 雨漏りが解決する
- 他の屋根工事と比較して費用が高額
- 施工できる屋根修理業者が限られてくる
- 工事中に雨が降ると雨漏りするリスクがある
葺き直し工事の場合、屋根材を捨てる必要がないため産業廃棄物処理費用を抑えることができます。
ただし、現状の瓦を割らずに撤去と再設置をしなければならず、葺き替え工事よりも手間をかけて搬出入しなければなりません。
そのため、工事費用の圧縮はそれほど大きくないデメリットがあります。
また、葺き直し工事に対応している屋根修理業者も限られてくるため、確実な葺き替え工事を採用するケースが多い傾向にあります。
③重ね葺き工事(カバー工法)
重ね葺き工事(カバー工法)とは、現状の屋根の上に新しく屋根を造り込む工事です。
重ね葺き(カバー工法)のメリットデメリットは以下のとおりです。
- 既存屋根の廃材処理・処分費用が必要ない
- 屋根が二重になるので断熱性・遮音性が向上する
- 屋根の撤去工程がないので工期が短い
- アスベスト含有の屋根も処理費用が必要ない
- 下地を修繕することはできない
- 屋根の重量が増して耐震性が下がる
- 瓦屋根には採用できない工法
重ね葺き(カバー工法)は、既存屋根をそのまま生かすので撤去工程や処分費用が必要ありません。
屋根も二重になるので断熱性や遮音性が増すほか、工事期間も短くて済むメリットがあります。
ただし、下地の修繕はできない上に重量が増してしまうため、耐震性は若干下がると言えるでしょう。
また、現状で瓦屋根の場合、そもそも重ね葺き(カバー工法)自体を採用することができないため注意しましょう。
④塗装工事(屋根塗装)
屋根塗装とは、現状の屋根表面を新しく塗り替えるメンテナンス工事です。
屋根塗装のメリットデメリットは以下のとおりです。
- 屋根のカラーバリエーションを変更できる
- 屋根材の保護ができるので耐久性が向上する
- 屋根の美感性が向上する
- メンテナンスの中ではコストが安い
- 雨漏りが発生している場合は解決できない
- 耐候性が低く安価な樹脂塗料はすぐに劣化する
- 縁切りをしないと雨漏りにつながることがある
屋根塗装は屋根材自体の保護が目的なので、塗り替えることで防水性や耐久性が向上します。
カラーバリエーションも豊富で好きな色に変更できるほか、美感性が向上するメリットもあります。
また、屋根工事のメンテナンスの中ではもっともリーズナブルなコストが魅力の一つと言えるでしょう。
一方で、現状で雨漏りが発生している屋根の場合、塗装をしても解決できないので別のメンテナンス工事をしなければなりません。
また、安価で耐候性の低い塗料で塗装した場合、すぐに劣化するので塗り替えの頻度も多くなるデメリットがあります。
加えて「縁切り」という雨水のはけ口を作る作業をしなければ、雨漏りにつながることもあるので注意が必要です。
⑤防水工事
防水工事とは、陸屋根形状をしている住宅の防水層を改修する工事になります。
防水工事のメリットデメリットは以下のとおりです。
- 雨漏りなどの不具合を解決できる
- 建物の防水性・耐久性が向上する
- 基本的に陸屋根しか採用できない
- 経年劣化が起きるので定期的なメンテナンスが必要
防水工事をすることで雨漏りなどの不具合を解決できるほか、建物の防水性や耐久性が向上します。
ただし、戸建て住宅の場合、陸屋根形状でなければ基本的に防水工事を採用することはできません。
また、紫外線による経年劣化が起きるので、定期的なメンテナンスも必要になります。
【部分修理編】軽微な屋根工事の種類は3つ!
屋根工事には大がかりな全面改修工事以外にも、以下のような軽微な工事の種類があります。
- 漆喰工事
- 棟(瓦・板金)工事
- 部分的な差し替え工事
それでは個別の工事内容について詳しく解説します。
①漆喰工事
漆喰(しっくい)工事とは、瓦屋根などで剥がれた漆喰部分を塗り直す工事です。
瓦屋根における漆喰は、接着剤としての役割と雨水の侵入を防ぐ防水機能としての役割があります。
しかし、10~15年以上経つと経年的な劣化で漆喰が剥がれてしまうので、定期的に漆喰の詰め直し工事が必要になってきます。
なお、特殊なシリコンや防水剤を配合した南蛮漆喰などを利用することで、通常の漆喰より次回のメンテナンスまでの期間を延ばすことができます。
②棟(瓦・板金)工事
棟(瓦・板金)工事とは、屋根の棟部分を新しく交換する工事です。
スレート屋根や金属屋根の場合、木製や樹脂製の下地を取り付けた後、ガルバリウム鋼板などの金属製で仕上げます。
一方で、瓦屋根の場合、瓦の積み直しや漆喰の詰め直し工事が基本となります。
屋根の棟部分は強風で飛ばされてしまうことも多く、放置すると雨漏りにつながるので早期修繕が必要な部位になります。
なお、台風や強風で棟部分が外れた場合、火災保険などを適用して修理することも可能です。
③部分的な差し替え工事
部分的な差し替え工事とは、破損した屋根材を部分的に指し替える工事になります。
たとえば瓦は屋根材自体の耐久性は長いですが、地震や台風などの自然災害によって瓦が破損するケースがあります。
割れた状態を放置すると雨漏りする可能性もあるので、差し替え工事で部分的に瓦を新しく交換する必要があります。
部分的な差し替えというのは、全体工事をするほどではない軽微な修繕をしたい場合に行う工事と言うことです。
屋根工事で重要なことは2種類!正しく理解しよう!
屋根工事を行う際には、以下のポイントが非常に重要になってきます。
- 施工業者選び
- 屋根材の種類選び
これらの点に注意することで、適切な屋根工事を実現することが可能です。
それでは、個別のポイントについて詳しく解説します。
①施工業者選び
屋根工事で重要なポイントのひとつ目は、どのような屋根修理業者に依頼するのか?という点です。
ひとくちに屋根修理業者と言っても、以下のようにさまざまな施工業者があります。
- 総合リフォーム店
- 地域の工務店
- 外装リフォーム専門店
- 建築板金・瓦屋根業者
業者ごとに特徴が異なるため、施工業者について正しく理解した上で依頼先を判断しなければなりません。
各施工業者の特徴については下記ページでも解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
②屋根材の種類選び
屋根工事で重要なポイントのふたつ目は、屋根材の種類選びです。
屋根材は主に以下のような種類があります。
- 瓦系
- 金属系
- スレート系
たとえば、葺き替え工事なら瓦屋根から金属屋根といって具合に、現状の屋根材とは違う屋根材を利用することができます。
屋根材の種類によっても耐候性や機能性が大きく異なってくるので、屋根工事をする際には慎重に屋根材を選定しましょう。
屋根材の種類については下記ページでも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
今回の記事では、屋根工事にはどのような種類があるのか?を詳しく解説しました。
なお、本記事の要約は以下のとおりです。
- 全面的な屋根工事には葺き替え・葺き直し・重ね葺きがある
- 美観目的の改修工事は塗装工事
- 陸屋根の改修工事は防水工事
- 軽微な屋根工事には漆喰補修・棟交換・部分的な差し替え工事がある
- 屋根工事する際には業者選定が重要
- 全面的な改修工事をするなら屋根材の種類にも注目する
屋根工事はメンテナンス内容に合わせて、大規模な修繕工事から小規模な修理までさまざまな工事があります。
適切な屋根工事を実施するためにも、各工事内容の特徴を正しく理解しておきましょう。