昨今の屋根材市場では、ガルバリウム鋼板を主流とする金属屋根が多く普及しています。
一方で、「ジンカリウム鋼板」という金属屋根も普及しており、初心者の方には違いがわからないケースも少なくありません。
そこで本記事では、金属の屋根材「ジンカリウム鋼板」について詳しく解説します。
基本的な特徴からガルバリム鋼板との違い、採用した場合のメリットデメリットまで紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ジンカリウム鋼板とは?
ジンカリウム鋼板とは金属屋根に用いられている素材のひとつで、以下の組成で作られています。
- アルミ(55%)
- 亜鉛(43.5%)
- シリコン(1.5%)
ただし、日本国内では自然石粒付きの屋根材が多く取り扱われているので、自然石粒付き鋼板のことをジンカリウム鋼板と指すケースが一般的です。
ジンカリウム鋼板とガルバリウム鋼板の違いって何?
そこで気になってくるポイントといえば、「ジンカリウム鋼板とガルバリウム鋼板の違いって何?」ということ。
この疑問を解決するために、ジンカリウム鋼板とガルバリウム鋼板の組成を比較してみましょう。
素材 | 組成 |
ジンカリウム鋼板 |
|
ガルバリム鋼板 |
|
ご覧のとおり、両方の素材はほぼ同じ組成でできています。
では、なぜ同じ素材にもかかわらず呼び名が違うのか?というと、商標を持っている会社が違うからです。
ジンカリウム鋼板(ZINCALUME®️)の商標を持っているのは、オーストラリアにあるBlueScope社です。
これに対してガルバリウム鋼板※(Galvalume®️)の商標を持っているのは、アメリカにあるBIEC International社になります。
※日本語表記の「ガルバリウム鋼板®」の商標を持っているのは日本製鉄株式会社です。
要するに、ジンカリウム鋼板もガルバリウム鋼板も、どちらも同じ組成でできた素材であるということです。
メリットはある?ジンカリウム鋼板の5つの特徴
ジンカリウム鋼板には、以下で紹介する5つのメリットがあります。
- 自然石粒付きで意匠性が高い
- 遮音性・防音性がある
- 断熱性がある
- 軽量で耐震性能が向上する
- 基本的に保証期間が長い
ここからは、ジンカリウム鋼板の各メリットについて詳しく解説します。
①自然石粒付きで意匠性が高い
ジンカリウム鋼板の屋根材は、自然石粒付きで意匠性が高い特徴があります。
フラットで単調なデザインの金属屋根とは違い、瓦風(洋・和)の形状で多彩な自然石調で仕上げられています。
もちろんメーカーや製品によっても変わりますが、総じて屋根に立体感が生まれるので、通常の屋根よりも意匠性に優れているメリットがあります。
②遮音性・防音性がある
ジンカリウム鋼板の大きな特徴の一つが、遮音性や防音性に優れているという点です。
ジンカリウム鋼板の屋根材は表面に自然石が吹き付けられているので、金属に直接雨が当たらず音を軽減させてくれます。
無数に吹き付けられている石粒が、雨の衝撃音などを拡散してくれるというわけです。
一般的な金属屋根のように雨音が響かないので、遮音性や防音性に優れている特徴があります。
③断熱性がある
ジンカリウム鋼板の屋根材は表面に石粒が吹き付けられているので、断熱性が高いメリットがあります。
通常の金属屋根は金属部分に直接日光が当たるので、熱伝導率の高い金属部分は急激に温度上昇します。
一方で、ジンカリウム鋼板の屋根材は、石粒があることで空気層ができます。
これにより、直接金属部分に日が当たらなくなるので、熱が拡散して断熱効果が出てくるというわけです。
④軽量で耐震性能が向上する
通常の金属屋根同様にジンカリウム鋼板も軽量な屋根材のため、建物の負担が減り耐震性が向上します。
屋根材の種類 | 重量(㎡) |
瓦 | 50kg/㎡ |
軽量瓦(スレート) | 20kg/㎡ |
金属(ガルバリウム鋼板・トタン) | 5kg/㎡ |
自然石粒付き金属(ジンカリウム鋼板) | 7kg/㎡ |
アスファルトシングル | 9kg/㎡ |
石粒無しの金属屋根(ガルバリウム鋼板・トタン)よりは若干重いものの、瓦の1/7程度しか重量はありません。
このようにジンカリウム鋼板は非常に軽量なため、耐震性の観点からも有効な屋根材と言えます。
⑤基本的に保証期間が長い
ジンカリウム鋼板の屋根材は輸入品が多いため、基本的に保証期間が長い傾向にあります。
一般的に30年間の保証が付く屋根材が多く、なかには50年の保証期間を設定しているケースもあります。
一方でガルバリウム鋼板の場合、塗膜保証が15年、赤さびが20年保証、穴あきは25年保証程度が一般的です。
このようにジンカリウム鋼板の保証期間というのは、ガルバリウム鋼板よりも長く設定されている傾向にあります。
ジンカリウム鋼板に欠点はある?デメリットも確認しよう!
ジンカリウム鋼板を採用する際には、以下で紹介するデメリットについてもきちんと把握しておきましょう。
- 次世代ガルバリウム鋼板「SGL」より耐食性は低い
- 施工後のメンテナンス性が悪い
- 施工費用が高い傾向にある
それでは、ジンカリウム鋼板のデメリットについて個別に解説します。
次世代ガルバリウム鋼板「SGL」より耐食性は低い
ジンカリウム鋼板というのは、次世代ガルバリウム鋼板の「SGL(エスジーエル)」より耐食性が低いです。
SGLはガルバリウム鋼板をベースにMg(マグネシウム)が加わっており、耐食性が3~6倍ほど向上している素材です。
国内で発売されているガルバリウム鋼板の屋根材の多くは、このSGLが採用されているため錆にも強い特徴があります。
一方で、ジンカリウム鋼板は通常のガルバリウム鋼板と同等品なので、SGLよりは耐食性に劣っているので注意しましょう。
施工後のメンテナンス性が悪い
ジンカリウム鋼板は意匠性の高いデザインをしている反面、メンテナンス性が悪いデメリットがあります。
たとえば、洋瓦風のジンカリウム鋼板は金属で造形されているだけなので、上に人が乗ると凹んでしまうことが多いです。
何かしらの不具合が生じて屋根に上ることがあっても、屋根材を変形させないように作業するのは至難の業です。
このように、ジンカリウム鋼板は意匠性が高い反面、メンテナンス性に欠けてしまう一面があります。
施工費用が高い傾向にある
ジンカリウム鋼板のデメリットは、国産の金属屋根と比較すると施工費用が高くなるケースが多い点です。
この要因となっているのが、「差別化商品になっている」または「施工できる業者が少ない」ということが挙げられます。
基本的に意匠性も高く保証期間の長いジンカリウム鋼板は、一般的な金属屋根より差別化を図りやすい商材です。
そのため、通常の金属屋根よりも施工価格を高く設定している会社も非常に多いです。
また、そもそも取り扱っている業者が少ないという点も、工事費用が下がらない要因と言えます。
ジンカリウム鋼板はこれらの複合的な要因も相まって、工事費用が高く設定されているケースが多い傾向にあります。
ジンカリウム鋼板を選ぶ際に注意しておきたいポイント
ジンカリウム鋼板を採用する際には、以下の点に注意しましょう。
- 断熱一体型も視野に入れてみる
- 屋根材表面の石粒は落ちる
これらの点を理解しておくことで選択肢の幅も広がるので、個別の内容について詳しく解説します。
断熱材一体型も視野に入れてみる
ジンカリウム鋼板は断熱性や防音性に優れいている特徴がありますが、断熱一体型の屋根材も視野に入れてみるのがおすすめです。
断熱一体型の屋根材は裏側に硬質ウレタンフォームが施されているため、通常の金属屋根とは違い断熱性や防音性に優れています。
ジンカリウム鋼板よりも断熱性や防音性には優れているので、機能性を優先させたい場合は断熱一体型の屋根材も視野に入れてみましょう。
屋根材表面の石粒は落ちる
ジンカリウム鋼板の屋根材は表面に石粒が吹き付けられていますが、これは経年劣化と共に剥がれ落ちてきます。
施工してから年数が経つにつれてボロボロと落ちてくるため、雨樋の中が詰まってしまうケースもあります。
各メーカーには補修用セットも用意されていますが、先にも解説した通りジンカリウム鋼板は凹みやすくメンテナンス性は非常に悪いです。
ジンカリウム鋼板を選定する際には、このようなメンテナンスの部分も考えた上で検討しましょう。
ジンカリウム鋼板の屋根材を販売するおすすめメーカー2選!
ジンカリウム鋼板の屋根材を販売しているおすすめメーカーは以下のとおりです。
- 伊藤忠建材
- ディートレーディング
ここからは、各メーカーの特徴について詳しく解説します。
伊藤忠建材
伊藤忠建材からは、ストーンチップ鋼板屋根材の「スカイメタルルーフ」が発売されています。
スカイメタルルーフは、ジンカリウム鋼板がベースで表面に自然石粒がコーティングされている屋根材です。
セラミックコーティングされた自然石粒が表面を覆っているため、塗り替えなどのメンテナンスは必要ありません。
天然スレート調の重厚感あるデザインやナチュラルでシックな木目調など、デザインが豊富なのも特徴の屋根材です。
ディートレーディング
ディートレーディングからは、自然石粒で仕上げられたジンカリウム鋼板のD’s Roofing(ディーズ ルーフィング)が発売されています。
ジンカリウム鋼板の火付け役とも言えるメーカーで、22年で約80000棟を超える採用実績があります。
シンプルなデザインのディプロマットスターやS字瓦調のローマンなど、幅広いデザインパターンがあるのも特徴です。
基材に30年のメーカー保証も付いているので、意匠性の高いジンカリウム鋼板を施工したい場合におすすめのメーカーです。
まとめ
今回の記事では、意匠性の高い金属屋根材「ジンカリウム鋼板」について詳しく解説しました。
記事の要約は以下のとおりです。
- ジンカリウム鋼板とガルバリウム鋼板は同じ金属素材
- ジンカリウム鋼板(ZINCALUME®️)はBlueScope社の登録商標
- 意匠性が高く防音性・断熱性がある屋根材
- 軽量な屋根材なので耐震性が向上する
- 保証期間が長い材料が多い
- SGL(エスジーエル)より耐食性は劣る
- 断熱材一体型の方が機能性は高い
- あまりメンテナンス性はよくない
国内のジンカリウム鋼板は自然石粒付きの屋根材として認識されているため、意匠性を重要視する方におすすめです。
一方で、機能性は次世代ガルバリウム鋼板のSGLや断熱一体型には劣るので、トータルで比較して検討してみましょう。