屋根材の中でも多くの戸建て住宅に採用されている種類が、化粧スレートと呼ばれるスレート屋根になります。屋根塗装は人気の高い屋根工事になりますが、工事目的や費用相場が知りたいという方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、スレート屋根を塗装する目的を解説すると共に、塗装工事のメリットや一般的な費用相場、おすすめ塗料まで詳しく解説します。

スレート屋根を塗装する目的とは?

スレート屋根を塗装する目的とは?

スレート屋根の塗装を調べていく内に、専門家でも意見が分かれる塗装の不要・必要論。素人の方にとって、このように専門家の意見が分かれていると、非常に分かりにくいと感じてしまうのではないでしょうか。

そこでここからは、そもそもスレート屋根を塗装する目的は何なのか?を分かりやすく解説します。

美観性を維持するため

スレート屋根を塗装する大きな目的は、美観性の維持・向上です。

スレート屋根は基盤の表面に塗装が施されており、塗装部分は直接紫外線や風雨にさらされるため、経年的な劣化が起きます。この経年劣化はステージに分かれていて、初期段階は色あせや退色といった現象が起こります。

これを放置すると塗装部分に小さな亀裂(ヘアークラック)が生じ始め、次第に塗膜の剥がれが発生します。このような劣化状態を基のキレイな状態に戻す工事が、屋根塗装における重要な意味合いになってくるということです。

基板腐食による二次被害を防ぐため

美感性の維持向上で重要な役割を持つスレート屋根の塗装ですが、もう一つの役割として基板腐食による二次被害を防ぐといった観点があります。

どういうことかというと、先ほど説明したように化粧スレートは経年に段階的な劣化状況が発生します。最終的に塗膜の剥がれ・剥離といった現象が起きますが、この状態になると屋根材を保護する塗装の層がなくなるので、基盤がむき出しになります。

これは何を意味するかというと、基盤が直接風雨にさらされるということになります。当然、放置する年数が長くなるにつれて基盤が劣化するので、屋根材自体の破損や強風によって飛ばされてしまう原因にもなります。

軽量の屋根材とは言え、強風で飛ばされて人に当たれば怪我する原因にもなるでしょう。このような二次的被害を防ぐためにも、基盤を保護するための塗装が必要になるわけです。

スレート屋根を塗装するメリット

スレート屋根を塗装するメリット

スレート屋根を塗装する場合、以下のようなメリットがあります。

  • 美感性の維持&建物の雰囲気を変更できる
  • 住宅の機能性が向上する

屋根工事にはいくつか種類がありますが、塗装を選択した場合は上記のようなメリットがあります。ここでは、各メリットについて深掘り解説しますので、ぜひチェックしてみてください。

美感性の維持&建物の雰囲気を変更できる

屋根塗装の大きなメリットのひとつ目は、美観性の維持に加えて建物の雰囲気を変更できる点です。

例えば、外壁塗装を行った際に屋根がくすんでいると建物の美観上、適しているとは言えませんよね。しかし、屋根塗装できっちりキレイにしてあげることで、外装デザインの美観性を維持することができます。

また、多くの屋根はブラックなどが採用されていますが、経年劣化でグレーよりに白っぽくなるのが通常です。一方、塗装で色をグリーン系やオレンジ系に変えることで、建物の雰囲気を一新させることが可能です。

住宅の機能性が向上する

近年の塗料は進化を遂げているため、美観性という観点以外にも、住宅の機能性が向上するというメリットがあります。

例えば、太陽光を効率よく反射する遮熱塗料や断熱塗料をスレート屋根に塗装した場合、建物内に熱が侵入しにくくなるので、エアコンの稼働効率が向上し省エネ効果が期待できます。これにより夏場の電気代なども安くなるので、エコな住宅になるというわけです。

このように、選択する塗料の種類によっては住宅性能を向上させる役割が塗装にはあります。

スレート屋根塗装の費用相場

スレート屋根塗装の費用相場

スレート屋根を塗装する場合、塗料のランクや種類によって費用が若干異なってきます。そのため、塗装を選択する際には、塗料の種類やランクについて事前に理解しておく必要があります。

そこでここからは、塗料の代表的な種類を紹介しつつ、ランク別に掛かる費用相場を解説します。

塗料の種類・ランクについて

屋根は紫外線量が多く降り注ぐ部位なので、通常の塗料よりも耐久性に優れた設計がされています。

なかでも、以下のようなランクで種類が分かれているので覚えておきましょう。

  • ウレタン樹脂塗料
  • シリコン樹脂塗料
  • フッ素樹脂塗料
  • 遮熱・断熱塗料

ウレタン塗料は屋根塗料で最低ランクに位置する塗料で、昨今ではあまり使われておりません。というのも、その上のグレードに位置するシリコン塗料と資材費がほぼ変わらず、耐久性が低いためです。

そのため、ウレタン塗料よりもシリコン樹脂系塗料を選択するのが昨今の主流です。一方で、フッ素樹脂塗料は最も耐久性に優れているグレードで、ツヤ持ちも非常に優れている特徴があります。ただし、資材費が高くなるので、工事費用が若干アップするデメリットがあります。

その他にも、先ほど解説した遮熱・断熱塗料は非常に人気の高い塗料で、住環境を改善することが可能です。

塗料ランク別の費用相場

塗料グレード

施工単価/㎡

耐用年数の目安

ウレタン樹脂系塗料

1500~2500円/㎡

3~5年

シリコン樹脂系塗料

1800~3500円/㎡

5~8年

フッ素樹脂系塗料

2500~4500円/㎡

10~20年

遮熱・断熱系塗料

3000~4000円/㎡

10~15年

これらはあくまで一般的な相場なので、詳細は各施工店に確認しましょう。

例えば、60㎡のスレート屋根をシリコン塗装した場合、3,000円/㎡(塗装・タスペーサー・高圧洗浄込み)なら『60㎡×3,000円=180,000円』程度が塗装費用になります。ただし、ここに足場代は含まれていないので、約20万円前後の足場費用が別途必要になると考えてください。

スレート屋根塗装のおすすめ塗料と選び方を紹介

スレート屋根塗装のおすすめ塗料と選び方を紹介

スレート屋根用で使われている塗料は、各メーカーからさまざまなタイプが発売されています。どのカタログを見ても似たような説明ばかりなので、素人の方には判断が付かないと思います。

なので、ここからはプロがおすすめする屋根塗料の一部を紹介します。塗料選びの参考にしてみてください。

①コスパ重視のラジカル制御塗料

なるべく費用をかけずにスレート屋根をキレイにしたい場合、コストパフォーマンスに優れたラジカル制御塗料がおすすめです。

ラジカル制御塗料とは、シリコングレードとフッ素グレードの中間に位置するグレードの塗料です。従来のシリコン塗料よりも耐候性に優れており、価格はフッ素よりも安くコストパフォーマンスに優れている特徴があります。

  • 日本ペイント:ファインパーフェクトベスト
  • エスケー化研:エスケープレミアムルーフSi
  • 関西ペイント:アレスダイナミックルーフ

②耐久性重視のフッ素樹脂塗料

メンテナンスの頻度を落としてなるべく耐候性を重要視したい場合、フッ素グレードの塗料がおすすめです。

フッ素樹脂は紫外線に強い特徴があるので、屋根に塗装することで優れた耐久性を発揮します。足場代も非常に大きいので、なるべく費用をかけたくないという方は、長期的に見てライフサイクルコストを抑えられるフッ素樹脂塗料も検討してみましょう。

  • 日本ペイント:ファイン4Fベスト
  • AGCコーテック:ルミステージ
  • エスケー化研:ヤネフレッシュF

③機能性重視の遮熱・断熱塗料

夏場のエアコン稼働効率を上げて快適な住環境にしたい場合、遮熱・断熱塗料がおすすめです。

遮熱・断熱塗料をスレート屋根塗装すると屋根材自体が暑くならないので、熱侵入を大幅に軽減できます。昨今は各メーカーから優れた遮熱・断熱塗料が発売されているので、優れた住環境を目指す方はチェックしてみましょう。

  • 日本ペイント:サーモアイシリーズ
  • 関西ペイント:アレスクールシリーズ
  • エスケー化研:クールタイトシリーズ
  • ミラクール:ミラクール
  • アステックペイント:MF-IR/Si-IRシリーズ
  • 日本中央研究所:アドグリーンコート
  • 日進産業:ガイナ

スレート屋根を塗装する際の注意点

スレート屋根を塗装する際の注意点

スレート屋根を塗装する際には、足場の存在と縁切りの必要性について理解しなければいけません。これらを周知しておかないと予算が合わないトラブルや、工事をしたことによる雨漏りの発生など、予期せぬトラブルに発展する可能性があります。

そのため、スレート屋根で塗装をする際には、これら二つのポイントを事前に周知しておきましょう。

屋根塗装のみでも足場は必要

スレート屋根で塗装を選択した場合、必ず足場の設置が必要になることを理解しておきましょう。

屋根は住宅で最も高い位置になるので、危険を伴う高所作業になります。特に塗装の場合、塗った直後にその上を乗ると滑ってしまうため、転落落下の危険性も伴います。そのため、屋根塗装では必ず足場を設置して作業員の確保をしなければなりません。

足場代は戸建て住宅で概ね20万円程度になりますが、この費用を削ってコストダウンを図ろうとするのはNGです。作業員の安全性を低下させてまで作業を行うべきではないので、まずは安全第一で施工できる体制として、足場は必要経費ということを認識しておきましょう。

「縁切り」または「タスペーサーの設置」は必ず行う

スレート屋根を塗装する際に注意するべきポイントは、縁切りまたはタスペーサーの設置が必ず必要ということ。

スレート屋根というのは、塗装をすることで本来雨水を排水するべき隙間が埋まってしまいます。この状態を放置して雨が降ると排水できないので、雨漏りが起きてしまう可能性があります。

これを防ぐため、塗装をした後に隙間に切り込みを入れる作業として「縁切り」という作業を行うわけです。しかし、この作業は塗る作業よりも手間が掛かってしまうので、縁切り費用が膨れてしまうデメリットがあります。

そこでタスペーサーと呼ばれる部材を塗装前に設置することで、予め隙間が埋まらないように隙間を固定する部材を設置します。これにより縁切りの必要がなく隙間を確保できるので、雨水も適切に排水できるようになるということです。

要するに、スレート屋根を塗装する際には、これら縁切りまたはタスペーサーの設置が重要になるので、必ず工事内容に含まれているかチェックしましょう。

まとめ

今回の記事では、スレート屋根の塗装ついて詳しく解説しました。

記事の要約は以下のとおりです。

  • 塗装の目的は美観性の維持と二次被害を防ぐため
  • 塗装で色を変えると雰囲気を一新できる
  • 遮熱・断熱塗料を使うと機能性もアップする
  • 塗料ランクによって費用が異なる
  • コスパ重視はラジカル塗料がおすすめ
  • 耐久性重視はフッ素樹脂塗料がおすすめ
  • 機能性重視は遮熱・断熱塗料がおすすめ
  • 足場は必ず設置すること
  • 縁切りまたはタスペーサーは必ず設置する

スレート屋根は塗装できる部材なので、適切な時期で塗り替えを検討してみましょう。

なお、スレート屋根用塗料は種類も非常に豊富なので、予算や目的に合わせて選択することが重要です。