大手屋根材メーカーのニチハから、パミールという屋根材が過去に発売されていました。

このパミールで施工された物件というのは、さまざまな問題が生じており、リフォーム業界でも一時話題に挙げられていたのをご存じでしょうか。

今回の記事では、問題の多かった屋根材「パミール」に焦点を当てて、どのような問題が生じていたのかを解説します。

また、通常の屋根材との見分け方や、パミールで施工されている物件で推奨するメンテナンス方法なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

ニチハの屋根材「パミール」とは?

ニチハの屋根材「パミール」とは?

屋根材メーカーのニチハが製造販売していた「パミール」とは、スレート屋根材の一種です。

参考:【住宅用】屋根材の種類には何がある?特徴から価格まで徹底比較!

1996年頃から発売されたパミールは、当時アスベスト問題が取り上げていたことから、ノンアスベスト建材として開発され一般発売されました。

アスベスト規制を背景として売り出された商品でしたが、パミールで施工された物件は10年後にさまざまな問題が生じ始めます。

製造メーカーであるニチハは、屋根材側の問題を認めていませんが、多くの物件で同様の症状が出ているのも事実です。

そのため、屋根リフォームを生業とする業者の中でパミールというのは、非常に問題の多い屋根材として現在も認識されています。

パミールの屋根材で生じる問題の症状

パミールの屋根材で生じる問題の症状

そんな問題の多い屋根材のパミールでは、主に以下のような症状が発生します。

  • 層状(ミルフィーユ)剥離
  • 釘の錆腐食による屋根材のズレや落下

ここからは、パミールで施工された物件に生じる代表的な問題点について解説します。

層状(ミルフィーユ)剥離

パミール屋根に多い問題の症状として、層状(ミルフィーユ)剥離が挙げられます。

この層状剥離とは、屋根材がまるでミルフィーユのように層ごとに剥がれてしまう症状のことを指しています。

ミルフィーユのように剥がれてしまうことから、ミルフィーユ剥離と呼んでいるケースもあります。

これは経年劣化とともに症状が拡大する傾向にあり、施工後10年以上経過した物件の多くでこのような層状剥離が確認されています。

釘の錆腐食による屋根材のズレや落下

次に多いパミール屋根の問題の症状は、専用釘の錆腐食による屋根材のズレや落下です。

パミールを含むスレート屋根というのは、屋根材を留め付けるのに釘を用いています。

パミールでは専用の釘が使われていますが、この専用釘の頭部分が錆腐食を起こしてしまい、屋根材を留め付けることができなくなります。

屋根材を固定できていない状態なので、自然落下も発生しますし、強風の影響で吹き飛ばされてしまうこともあります。

この問題は非常に深刻で、屋根材の不具合だけに治まらず、落下した屋根材が人などに当たれば人身事故にもなり得るということです。

ラスパート釘に関するニチハのプレスリリリース

製造元であるニチハでは、以下のようなプレスリリースを行っています。

ラスパート釘(屋根材「パミール」付属品)に関するお詫びとお知らせ

この度、当社では、屋根材「パミール」販売時に無償配布した「パミール用釘」(品番:JQ20)の一部に、耐食性表面処理(ラスパート処理)のメッキ厚の薄いものが混入していたことが判明しました。
耐食性表面処理(ラスパート処理)のメッキ厚が薄い場合、正常にメッキ処理がなされた釘と比べ、経年に伴う腐食の進行が早まる可能性があり、屋根材のズレ・落下などが生じる可能性があります。
現在のところ人的被害の報告はありませんが、当社では、関係する省庁に概要を報告するとともに、安全処置が必要なものについては無償での処置を随時進めてまいります。

関係各位には、ご迷惑をお掛けしますことを深くお詫び申し上げますとともに、今後はこの様なことがないよう、商品の安全・品質管理に一層の努力を重ねてまいります。何卒、ご理解いただきますよう、お願い申し上げます。

ニチハ株式会社:ラスパート釘(屋根材「パミール」付属品)に関するお詫びとお知らせ

パミール屋根の見分け方

パミール屋根の見分け方

パミール屋根の見分け方には、いくつかの方法があります。

  • 劣化状況から判断する
  • 屋根材の形状から判断する
  • 屋根材のデザインから判断する

まず、最も簡単な見分け方として、劣化状況から判断するという方法があります。

これは、先にも解説した通り、パミール特有の劣化症状である層状(ミルフィーユ)剥離が起きているかどうかをチェックするという方法です。

次に屋根材の形状から判断するという方法もあります。

パミールは軒先部分に段差(凹凸)があるのですが、約170mm程度の間隔で均一になっている特徴があります。

通常のスレート屋根は間隔が等間隔ではないので、この軒先部分の形を見て判断することもできます。

なお、屋根材のデザインから判断することも可能です。

パミールは屋根材表面に薄い縦のラインが設けられており、このラインデザインの有無からパミール屋根を判断することができます。

このような複合的な基準からパミール屋根を判断することができます。

パミール屋根のリフォーム・メンテナンス方法について

パミール屋根のリフォーム・メンテナンス方法について

パミールは問題の多い屋根材のため、以下のようなメンテナンス方法がおすすめです。

  • 葺き替え工事
  • カバー工法(重ね葺き)

ここからは、パミール屋根に適しているリフォーム・メンテナンス方法について解説します。

葺き替え工事

現状の屋根材パミールの場合、葺き替え工事を行うのが最も適しています。

パミール屋根は釘が錆びてしまうので、屋根材を固定することができなくなるデメリットがあります。

そのため、最も効果的なメンテナンス方法は、パミール屋根を全て撤去して屋根材を作り替える葺き替え工事が適しています。

また、葺き替え工事なら既存屋根の下地に影響されないほか、下地からやり替えることも可能です。

これらの要因からも、葺き替え工事できちんとメンテナンスする方法が最も効果的といえるでしょう。

参考:屋根の葺き替え工事とは?知っておきたい基礎知識を徹底解説!

カバー工法(重ね葺き)

葺き替え工事は下地からやり替えることができる一方で、費用が高額というデメリットもあります。

費用を抑えてリフォームを行う場合、カバー工法(重ね葺き)という工事方法もおすすめです。

カバー工法は既存のパミール屋根の上に新しい屋根材を作る方法で、屋根材の撤去や処分費用がかからないメリットがあります。

ただし、費用が抑えられる反面、下地の状況に依存してしまうデメリットがあります。

そのため、下地の腐食が進んでいるような物件では採用することはできません。

採用の可否については初心者の方で判断することはできませんので、専門家に調査を依頼してチェックしてもらいましょう。

参考:屋根カバー工法とは?種類やメリットデメリットを徹底解説!

パミール屋根に塗装(塗り替え)ができない理由

パミール屋根に塗装(塗り替え)ができない理由

パミール屋根の場合、一般的な屋根リフォームである「塗装(塗り替え)」を採用することはできません。

その理由に、パミールは層状(ミルフィーユ)剥離という症状が現れてしまうからです。

屋根材の表面を綺麗に塗装で仕上げたとしても、ミルフィーユ状に屋根材の層が剥がれてしまい、塗装をしている意味がなくなってしまいます。

塗装をしてもこの症状は避けられないので、葺き替え工事かカバー工法を選択しましょう。

パミール屋根の修理で火災保険を利用する際の条件

パミール屋根の修理で火災保険を利用する際の条件

パミール屋根の修理で火災保険を利用する場合、以下の点に注意しましょう。

  • 自然災害または偶発的な事故による被害
  • 消滅時効前(3年)に請求を行う
  • 免責金額以上の修理の場合に限る

ここからは、火災保険を利用する上で重要なポイントについて解説します。

自然災害または偶発的な事故による被害

パミール屋根の修理で火災保険を利用する場合、自然災害または偶発的な事故による被害でなければ利用することはできません。

例えば、台風の影響で強風が吹き、屋根材が飛ばされてしまったというケースであれば、火災保険を利用できる可能性があります。

一方、時間の経過とともに屋根材が劣化するような、経年的な劣化に起因する修理は補償の対象外になるので注意しましょう。

火災保険というのは、あくまで自然災害または偶発的な事故による被害を補償する保険であることは認識しておくことが重要です。

消滅時効前(3年)に請求を行う

火災保険というのは、保険金を請求できる期限が法律で定められています。

保険金請求は3年経過すると時効を迎えてしまうため、損害があったら放置するのではなく、すぐに保険金の請求をする必要があります。

また、あまりにも時間が経ちすぎると、自然災害が原因であることを立証するのも難しくなります。

そのため、自然災害の影響で損害が生じた場合には、直ちに保険金請求の手続きに移りましょう。

免責金額以上の修理の場合に限る

火災保険は加入者が負担する金額の免責金額というものが定められているので、免責金額を上回る費用しか補償されません。

例えば、免責金額が5万円に定められている場合、15万円の修理費用なら免責金額の5万円が差し引かれた10万円が補償されると言うことです。

一方、修理費用が5万円しかかからない場合、免責金額(自己負担額)と同等の金額なので、保険金を請求することはできません。

これらの免責金額や条件は加入している保険会社によっても異なるので、詳細は契約している保険会社に確認を取りましょう。

まとめ

今回の記事では、パミール屋根の特徴について詳しく解説しました。

記事の要約は以下のとおりです。

  • パミールは1996年頃から発売されたスレート屋根材の一種
  • 層状(ミルフィーユ)剥離の症状が現れる
  • 釘の錆腐食による屋根材のズレや落下も起きる可能性がある
  • パミールは劣化状況から判断する
  • 屋根材の形状やデザインから判断することもできる
  • パミールのメンテナンスは葺き替え工事がおすすめ
  • 費用を抑えるならカバー工法(重ね葺き)という選択肢も
  • パミール屋根に塗装はできない

パミール屋根は問題の多い建築資材のため、適切なメンテナンスを行うことが重要です。

屋根材の落下による二次被害が起きてしまう前に,信頼できる業者に依頼して修理を行いましょう。

参考:良心的な屋根修理業者の探し方とは?トラブル事例から学ぶ正しい選び方