近年の国内における屋根材市場では、圧倒的に金属系の屋根材が普及しています。

そのなかでも、新築・リフォーム問わず採用されている屋根材が「ガルバリウム鋼板」です。

そこで本記事では、金属屋根の圧倒的シェアを誇るガルバリウム鋼板について詳しく解説します。

屋根に採用するメリットやデメリット、選ぶ際のポイントまで分かりやすく解説しますので、導入を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

ガルバリウム鋼板とは?

ガルバリウム鋼板とは?

ガルバリウム鋼板とは、主にアルミと亜鉛、シリコンで構成されているメッキ合板です。

素地の「鉄」にメッキ層があるため、鉄単体よりも耐食性や防食性、耐久性に優れている特徴があります。

2021年度 国内屋根材市場における素材別シェア
出典:株式会社矢野経済研究所(https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3097)

株式会社矢野経済研究所のプレスリリースによると、2021年度の国内屋根材市場における素材別シェアでは金属屋根が63.2%とされています。

従来のスレート系屋根材を含むセメント系瓦や、古くから使われている粘土瓦よりも圧倒的なシェアとなっており、金属屋根の需要があることがわかります。

この金属屋根のなかでも、圧倒的に採用されている屋根材が「ガルバリウム鋼板」というわけです。

トタン屋根と何が違う?

金属屋根にはガルバリウム鋼板以外にも、従来採用されているトタン屋根があります。

どちらもメッキ処理がされた合板ですが、主な違いは以下のとおりです。

ガルバリウム鋼板

トタン

メッキ部分の組成

  • アルミニウム

  • 亜鉛

  • シリコン

  • 亜鉛

トタンは鉄に亜鉛のメッキ層があるのに対して、ガルバリウム鋼板はアルミ、亜鉛、シリコンで組成されているメッキ層になります。

トタンは耐食性が弱く錆びやすいですが、ガルバリウム鋼板は耐食性も強くトタンの弱点を克服した金属材といえます。

メリットは4つ!ガルバリウム鋼板の特徴を知ろう!

メリットは4つ!ガルバリウム鋼板の特徴を知ろう!

金属屋根といえばガルバリウム鋼板ですが、主な特徴は以下の通りです。

  1. 耐久性が長くて経済的
  2. 耐熱性・熱反射率に優れている
  3. 耐食性が高く錆にくい
  4. 軽量で家の負担が少ない

ここからはガルバリウム鋼板の特徴・メリットについて詳しく解説します。

①耐久性が長くて経済的

ガルバリウム鋼板は耐久性に優れているため、メンテナンスの回数も少なく経済的な屋根材です。

亜鉛メッキ鋼板のトタンと耐久性を比較した場合、ガルバリウム鋼板の方が3倍から6倍程度耐久性に優れています。

周辺環境にもよりますが、基本的に耐久年数は25年~30年程度見込めるので、トタンのように何回もメンテナンスをする必要がなく経済的です。

②耐熱性・熱反射率に優れている

ガルバリウム鋼板は、アルミニウムと亜鉛、シリコンのメッキ層が施されており耐熱性に優れています。

このメッキ層に含まれているアルミニウムは多量なので、アルミメッキ鋼板に近い300℃から350℃の耐熱性があります。

また、トタンよりも熱反射率も高い素材なので、太陽光が降り注ぐ環境下の屋根において熱の吸収を抑えられるメリットもあります。

③耐食性が高く錆にくい

ガルバリウム鋼板の特質すべき点は、従来の亜鉛メッキ鋼板と比較して約3倍から6倍ほどの耐食性能があるということ。

金属屋根の懸念点といえば「錆の発生」ですが、ガルバリウム鋼板は耐食性が高いので腐食しにくいメリットがあります。

海岸エリアなどの過酷な環境下では金属のメンテナンスは多くなりますが、ガルバリウム鋼板を利用することでメンテナンスコストも抑えることができます。

④軽量で家の負担が少ない

ガルバリウム鋼板は薄い金属の板なので、瓦などの重い屋根材と比べて軽量で家の負担が少ない屋根材です。

たとえば、一般的な陶器瓦は1㎡あたりの重量が約50kg程度とされているので、仮に80㎡の屋根なら総重量は約4000kgになります。

一方で、ガルバリウム鋼板は1㎡あたりの重量は約5kg程度ですから、総重量は約400kgと陶器瓦の1/10程度に収まります。

建物に対する負担も少なくて済むので、重ね葺き(カバー工法)にも適している屋根材です。

デメリットもあり!ガルバリウム鋼板で知っておきたい2つの注意点

デメリットもあり!ガルバリウム鋼板で知っておきたい2つの注意点

メリットの多いガルバリウム鋼板にも、以下のようなデメリットがあります。

  1. 遮音性(防音性)は低い
  2. 断熱性は高くない

ここからは、導入前に知っておきたいガルバリウム鋼板の注意点を解説します。

遮音性・防音性は低い

屋根に使用されるガルバリウム鋼板は標準厚が0.35mmと1mmにも満たない厚さのため、一般的な金属屋根と同様に「遮音性」や「防音性」は低い屋根材です。

ただし硬質ウレタンフォーム付きのガルバリウム鋼板を採用することで、68db前後の雨音も約33dbまで低減させることができます。

その他にも、ビルボードなど雨音を低減できる下地材を利用すれば遮音性・防音性の問題は解決できます。

断熱性は高くない

金属は熱伝導率が高い素材なので、ガルバリウム鋼板も単体でみると決して断熱性は高くありません。

しかし、断熱性の問題も硬質ウレタンフォーム付きガルバリウム鋼板ビルボードを利用することで簡単に解決できます。

また、近年のガルバリウム鋼板は表面に遮熱塗装が施されているので、一般的な金属屋根よりも遮熱性が高い特徴があります。

ガルバリウム鋼板を選ぶ際のポイント

ガルバリウム鋼板を選ぶ際のポイント

ガルバリウム鋼板を選ぶ際には、以下のポイントに注目しましょう。

  • 縦葺きと横葺きのどっち?
  • 次世代ガルバリウム鋼板(SGL)か確認する!
  • 断熱材一体型も検討してみよう!

ここからは、ガルバリウム鋼板を選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。

縦葺きと横葺きのどっち?

ガルバリウム鋼板の屋根材には、縦葺きタイプと横葺きタイプがあります。

縦葺きとはトタン屋根と同じ形状のタイプで、雨水が軒先に流れるのと同じ方向に向かって屋根を葺く方法です。

縦葺きの場合は0.2寸から施工できるので、勾配が緩く水はけが悪い屋根に施工できます。また、施工が比較的しやすく工期も短縮できるので、施工費用が抑えられるメリットがあります。

一方で横葺きとは、昨今のガルバリウム鋼板では主流の施工方法で、横方向に向かって屋根材を葺いていく方法になります。

縦葺きとは違い2寸以上の勾配が必要ですが、断熱材一体型といった既製品があり機能性にメリットがあると言えます。

次世代ガルバリウム鋼板(SGL)か確認する!

昨今の金属屋根材は、次世代ガルバリウム鋼板「SGL(エスジーエル)」が注目されています。

ガルバリウム鋼板をベースに「マグネシウム(MG)」が2%含有されており、エスジーエルは防錆性が向上しています。

耐食性がガルバリウム鋼板の3倍以上あるので、さらに腐食が起こりにくい特徴があります。

以上の理由から、ガルバリウム鋼板を利用する際には「SGL(エスジーエル)」かどうかも確認しましょう。

断熱材一体型も検討してみよう!

金属屋根のデメリットは「遮音性」と「断熱性」ですが、これを解消できる屋根材として「断熱材一体型ガルバリウム鋼板」があります。

この屋根材は裏側に硬質ウレタンフォームが付いているので、断熱性が向上するほか金属屋根特有の雨音を軽減できます。

断熱材無しと比較してもそれほど大きな価格差なく施工できるので、断熱一体型ガルバリウム鋼板も検討してみましょう。

ガルバリウム鋼板の屋根材を販売するメーカー3選!

ガルバリウム鋼板の屋根材を販売するメーカー3選!

ガルバリウム鋼板の屋根材を販売するおすすめメーカーは以下のとおりです。

  • アイジー工業
  • ニチハ
  • 福泉工業

ここからは、各メーカーで販売されているガルバリウム鋼板の屋根材について詳しく解説します。

アイジー工業

金属製の外装材を販売するアイジー工業では、「アイジールーフ」という金属屋根を販売しています。

アイジールーフは超高耐久ガルバ(SGL)ベースで、断熱性や防火性に優れた断熱一体型ガルバリウム鋼板です。

製品ラインナップは以下のとおりです。

  • スーパーガルテクト フッ素
  • スーパーガルテクト
  • スーパーガルテクト C

スーパーガルテクト フッ素は、耐久性の長い遮熱性フッ素樹脂塗装で色あせしにくい特徴があります。

一方、スーパーガルテクトは特殊なちぢみ塗装が施されており、高級感のある質感を再現している屋根材です。

スーパーガルテクト Cについては短尺タイプなので、狭小地の施工でも扱いやすい長さが特徴です。

穴あき25年保証も付いているので、平地はもちろんのこと沿岸地域でも問題なく採用できるのでおすすめです。

ニチハ

窯業系や金属系の外装を販売するニチハからは、「センタールーフ」が発売されています。

SGLをベースに硬質ウレタンフォームとアルミラミネート加工紙の3層構造で、耐久性能や断熱性に優れた断熱材一体型となっています。

製品ラインナップは以下のとおりです。

  • 横暖ルーフα プレミアムS(生産一時休止)
  • 横暖ルーフ プレミアムS(2023年3月販売再開予定)
  • 横暖ルーフα S
  • 横暖ルーフS
  • 横暖ルーフS 1820

プレミアムSシリーズは遮熱性のフッ素樹脂が塗装されているため、穴あき25年に加えて塗膜保証が20年と充実しています。

Sシリーズはスタンダードタイプで、穴あき25年保証と塗膜保証は15年間となっています。

センタールーフは発売から20年以上の歴史がある商品なので、実績も多く信頼性の高い屋根材と言えます。

福泉工業

屋根や外壁の建材を取り扱う福泉工業からは、カバー工法に適したガルバリウム鋼板の屋根材が発売されています。

製品ラインナップは以下のとおりです。

  • シルキーG2
  • efルーフ(エフルーフ)
  • CRESPAルーフ(クレスパルーフ)
  • FSストーン(エフエスストーン)

シルキーG2(旧MFシルキー)は遮熱ちぢみ塗装が施されているので、摩耗性にも優れた断熱一体型の屋根材です。

efルーフは特殊なツヤ消し塗装が施された断熱一体型の屋根材で、シルキーG2同様に摩耗性に優れている特徴があります。

CRESPAルーフとFSストーンは瓦タイプの金属屋根で、CRESPAルーフが日本瓦風、FSストーンは洋瓦風の屋根材になります。

なお、製品の保証期間は各製品同様で、穴あきが25年間、塗膜が15年となっています。

まとめ

今回の記事では、金属屋根の主流「ガルバリウム鋼板」について詳しく解説しました。

記事の要約は以下のとおりです。

  • ガルバリウム鋼板はアルミと亜鉛、シリコンでできたメッキ鋼板
  • 耐久性が長く熱反射にも優れている
  • 錆びにくく軽量なので建物の負担が少ない
  • 遮音性や断熱性は高くないが、断熱材付きを選定すれば解決できる
  • 縦葺きと横葺きのどちらか確認する
  • SGL(エスジーエル)か確認する
  • 横葺きなら断熱一体型がおすすめ

金属屋根のガルバリウム鋼板は、新築・リフォームのどちらでも利用できる屋根材です。

非常に軽量で建物の負担も少なく経済的負担も少ない材料なので、屋根工事をする際には検討してみましょう。