洋風のデザインが特徴的な「アスファルトシングル」は、北米を中心に普及してきた屋根材です。
意匠性が高く日本国内でも人気の屋根材のため、新築・リフォーム問わずさまざまな物件で利用されています。
そこで本記事では、人気の高い屋根材「アスファルトシングル」について詳しく解説します。
一般的なスレート屋根材との違いや採用する場合のメリットデメリット、おすすめメーカーまで紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
アスファルトシングルとは?
アスファルトシングルはグラスファイバーにアスファルトをコーティングしたあと、スレート砂や彩色焼成砂を圧着して仕上げられた屋根材です。
日本国内においては5~6%のシェアにとどまっていますが、北米では80%以上の住宅に採用されている信頼性の高い特徴があります。
シート形状の屋根材なので、非常に軽量な上に一般的な屋根材に多いひび割れや破損といったトラブルも発生しません。
アスファルトシングルというのは、これらの特徴から国内でも根強い人気を誇る屋根材ということです。
スレートとアスファルトシングルの違いって何?
屋根材を選定する際には、スレートとアスファルトシングルでどのような違いがあるのか把握しましょう。
簡単な特徴比較は以下のとおりです。
比較項目 | スレート | アスファルトシングル |
特徴 |
|
|
重量(1㎡あたり) | 21kg/㎡ | 9kg/㎡ |
耐用年数 | 20~30年 | 20~30年 |
施工費用 | 6,000円前後 | 6,000円前後 |
耐用年数や施工費用に関しては、スレートもアスファルトシングルも同等程度で考えてOKです。
一方で、スレートは固く割れやすい一面がありますが、アスファルトシングルは柔軟性があるので割れてしまう心配がありません。
ポイントは5つ!アスファルトシングルで知っておきたいメリット
アスファルトシングルには、以下のようなメリットがあります。
- 意匠性に優れている
- 雨音を軽減できる(遮音性・防音性)
- 軽量で耐震性に優れている
- 複雑な屋根形状でも利用できる
- 価格が比較的安い
ここからは、アスファルトシングルのメリットについて詳しく解説します。
①意匠性に優れている
アスファルトシングルの大きな特徴は、洋風なデザインで意匠性に優れている点です。
一般的な屋根材はフラットで単調なデザインが多いですが、アスファルトシングルは表面を彩り豊かな石粒で仕上げています。
カラーバリエーションも豊富なので、重くなりがちな屋根の色合いを明るくすることができます。
個性豊かな風合いの住宅に仕上げたい場合、アスファルトシングルは非常に優位性の高い屋根材と言えます。
②雨音を軽減できる(遮音性・防音性)
アスファルトシングルは雨音を軽減できる屋根材なので、遮音性や防音性に優れている特徴があります。
表面に石粒が圧着されていることで雨の衝撃が分散されるため、気になる騒音を軽減させる効果があります。
金属屋根のように雨音が響くことがないので、快適な住環境を確保することができます。
③軽量で耐震性に優れている
アスファルトシングルは薄型のシート形状をしているため、非常に軽量で耐震性に優れている屋根材です。
屋根材の種類 | 重量(㎡) |
瓦 | 50kg/㎡ |
軽量瓦(スレート) | 20kg/㎡ |
金属(ガルバリウム鋼板・トタン) | 5kg/㎡ |
自然石粒付き金属(ジンカリウム鋼板) | 7kg/㎡ |
アスファルトシングル | 9kg/㎡ |
このように、アスファルトシングルは重量のある瓦よりも1/5以上軽量な特徴があります。
金属屋根には劣るものの、軽量で耐震性に優れている屋根材と言えるでしょう。
④複雑な屋根形状でも利用できる
シート形状をしているアスファルトシングルは、直線的で平滑な場所以外にもさまざまな場所で施工できます。
たとえば、湾曲した屋根形状をしている物件や、曲線の多い複雑な屋根形状でも問題なく利用できます。
非常に加工しやすく施工も容易な屋根材なので、屋根形状で制限が出ることはありません。
どのような屋根でも基本的に施工できる点は、屋根材を選定する上でアスファルトシングルの大きなメリットです。
⑤価格が比較的安い
屋根工事の中でも、アスファルトシングルの施工費用は比較的安い傾向にあります。
屋根の種類 | 価格相場 |
瓦 | 10,000〜20,000円/㎡ |
金属(ガルバリウム鋼板) | 6,000〜9,000円/㎡ |
スレート(化粧スレート) | 6,000〜8,000円/㎡ |
アスファルトシングル | 5,000〜7,000円/㎡ |
ご覧のとおり、他の屋根材と比較しても施工相場は抑えられています。
工事費用を抑えたい場合、価格が比較的安いアスファルトシングルはメリットのある屋根材と言えます。
屋根をアスファルトシングル葺きで仕上げる3つのデメリット
アスファルトシングルを採用する際には、以下のデメリット部分もきちんと把握しましょう。
- 強風で剥がれやすい
- 経年劣化で石粒がボロボロ落ちる
- 微生物が付着しやすい
それでは個別のデメリットについて詳しく解説します。
①強風で剥がれやすい
アスファルトシングルは軽いのがメリットの屋根材ですが、その反面、強風に弱い弱点があります。
基本的な施工方法はシングルセメントと呼ばれる接着剤を塗布した後、シングルネイル(釘)を打ち込みアスファルトシングルを固定します。
施工する際に圧着が不十分な状態だと、強風が吹くと屋根材が巻き上がってしまい剥がれてしまうケースがあります。
特に軽量な屋根材なので、施工不良や経年劣化で接着力が弱まると強風で剥がれてしまうデメリットがあります。
②経年劣化で石粒がボロボロ落ちる
アスファルトシングルに圧着されている石粒は、経年劣化が進むことでボロボロ落ちてきます。
気付かぬうちに表面の石粒が大量に落ちてくるので、雨樋の中に堆積するケースも非常に多く詰まりの原因にもなります。
さらに石粒の剥がれが進行すると外観上も悪くなるので、塗り替えなどのメンテナンスが必要になってきます。
③微生物が付着しやすい
アスファルトシングルのデメリットは、一般的な屋根材よりも微生物が付着しやすいという点です。
アスファルトシングルは表面に石粒が圧着されているため、通常の屋根材よりも凹凸の多い仕上がりです。
そのため、微生物(コケや藻)が発生した場合、屋根材の表面に付着しやすく落ちにくい傾向にあります。
事前に確認しよう!アスファルトシングルのメンテナンス方法
アスファルトシングルを採用する場合、工事後のメンテナンス方法もきちんと理解しておくことが重要です。
- 価格を抑えるなら塗装(塗り替え)
- メンテナンス頻度を下げるならカバー工法(重ね葺き工法)
- 耐震性を気にするなら葺き替え
それでは各メンテナンス方法について詳しく解説します。
価格を抑えるなら塗装(塗り替え)
アスファルトシングルのメンテナンス方法のなかでも、塗装(塗り替え)は費用を抑えることができます。
ただし、塗装工事を採用する場合は塗りつぶす形なので、アスファルトシングルの多彩な色味は再現できません。
基本的に色味が単色になってしまうため、仕上がり具合や風合いを優先させたい場合は不向きなメンテナンス方法です。
メンテナンス頻度を下げるならカバー工法(重ね葺き工法)
トータルのメンテナンス回数を減らす場合、カバー工法(重ね葺き工法)がおすすめです。
カバー工法では既存の屋根の上に新しく屋根を造り込むので、廃材も出ないメリットがあります。
アスファルトシングル以外にもさまざまな種類が選べるので、仕上げの屋根材を変えてしまうことも可能です。
塗装の場合は数年おきに塗り替えをする必要がありますが、カバー工法ならメンテナンス回数が少なくて済みます。
トータルのメンテナンスコストも抑えられるので、カバー工法は近年主流のメンテナンス方法です。
耐震性を気にするなら葺き替え
耐震性を気にする場合、カバー工法より葺き替え工事が適しています。
カバー工法では屋根が二重になるので、その分建物に加わる負担が増してしまいます。
アスファルトシングルや金属屋根など軽量な資材を利用しても総重量は増すため、耐震性を優先させる場合は葺き替え工事がおすすめです。
ただし、既存屋根の撤去で廃材が発生するほか、工程が増えるので費用面では最も大きなメンテナンス方法になります。
アスファルトシングルの屋根材を販売するおすすめメーカー2選!
アスファルトシングルを販売しているおすすめメーカーは以下のとおりです。
- 田島ルーフィング
- ニチハ
ここからは、各メーカーから発売されているアスファルトシングルの特徴について詳しく解説します。
田島ルーフィング
防水資材メーカーの田島ルーフィングからは、「シングル」と「ロフティー」というアスファルトシングルが発売されています。
ロフティーは天然石の砕石粒が使われている高級タイプで、耐久性が30年以上と長く重厚感がある風合いが特徴です。
シングルは彩り豊かな彩色砂で仕上げている通常タイプで、カラーバリエーションが豊富で好みの色調を選べます。
特に光触媒シリーズは防汚性能が極めて高く、アスファルトシングルの弱みでもある微生物の付着を軽減する効果があるのでおすすめです。
ニチハ
外装建材メーカーのニチハからは、アスファルトシングル「アルマ」が発売されています。
耐風圧性能が高いので風速38m/s以上の強風地域でも利用できるほか、重量が1kgの衝撃にも耐える耐衝撃性があります。
外部試験機関による1000時間にも及ぶ超促進耐候性試験においても、塗膜剥離や白化現象などの異常は発生していません。
新築・リフォーム(カバー工法・葺き替え)のどちらにも対応しているので、物件問わず利用できます。
まとめ
今回の記事では、軽量で洋風デザインの屋根材「アスファルトシングル」について詳しく解説しました。
記事の要約は以下のとおりです。
- グラスファイバーにアスファルトをコーティングした屋根材
- 屋根材表面には彩りの良い石粒が圧着されている
- 柔軟性があるので複雑な屋根形状でも利用できる
- 軽量な屋根材なので耐震性に優れている
- 遮音性・防音性に優れている
- 施工費用は比較的安い
- 経年劣化で剥がれやすく表面の石粒も落ちる
- コケや藻などの微生物が付きやすい
アスファルトシングルは加工もしやすく、さまざまな物件に利用できる屋根材です。
洋風でおしゃれな色合いが特徴の屋根材なので、デザイン重視で屋根材を選定している方にもおすすめです。