屋外の厳しい環境下から建物を守ってくれる部位が屋根です。そんな住宅に使用されている屋根材にはさまざまな種類があるため、葺き替え工事や屋根修理をする際にどれにするか迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、住宅で使用されている代表的な屋根材の種類について解説します。屋根材毎の特徴や価格相場なども紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
【基礎知識】3種類の屋根材を比較してみよう!
過酷な屋外環境から建物を守る役割の屋根材には、大きく以下の3種類に分類することができます。
- 瓦系
- 金属系
- スレート系
それぞれに特徴が分かれているため、ご自宅の屋根が現状でどのタイプになるのか確認してみましょう。
それでは屋根材の種類を個別に解説します。
瓦系
日本人の多くの方でなじみ深い屋根材の種類といえば、「瓦系」の屋根材になります。
なお、瓦系の屋根材は、以下のような種類で分類できます。
- 粘土瓦系
- セメント瓦系
たとえば、粘土瓦系には「陶器瓦」や「いぶし瓦」など、日本が古くから利用してきた瓦材が含まれています。
一方で、セメント瓦系には「コンクリート瓦」や洋風の「モニエル瓦」などが該当します。
近年では、セメントに樹脂繊維を混ぜて軽量化と耐震性を向上させた「樹脂繊維セメント瓦」なども発売されていて、バリエーションが豊富な特徴があります。
金属系
金属系の屋根は軽量で丈夫な特徴がある屋根材のため、リフォームなど改修市場で多く活用されている屋根材です。
なお、金属屋根には以下のような種類があります。
トタン屋根は薄い鉄板に亜鉛メッキ加工がされている屋根材で、古くから使われている金属屋根になります。
しかし、近年ではトタンよりも防錆性や耐久性の強い「ガルバリウム鋼板」や「ジンカリウム鋼板」といった屋根材が主流になっています。
スレート系
新築住宅などで多く採用されている屋根材のひとつが、スレート系の屋根材になります。
なお、主に使われているスレート系の屋根材は以下のとおりです。
化粧スレートはセメントを主成分とする薄型の瓦で、軽量かつ安価なスレート屋根材として普及しています。
一方、天然スレートは天然の粘板岩を加工して作られているスレート屋根材で、防火性・防水性に優れている屋根材になります。
瓦系の屋根材は2種類!耐久性が長いメリットも!
瓦系に分類される屋根材の種類は、代表的なのが粘土瓦系とセメント瓦系です。
そこでここからは、瓦系屋根材として粘土瓦とセメント瓦の特徴を詳しく解説します。
粘土瓦
粘土瓦は粘土を焼いて作られている焼き物の屋根材で、日本瓦や陶器瓦などが該当します。
粘土瓦は無機質の屋根材なので、耐久性に優れている特徴があります。
最古のものでは1300年の歴史を持つ奈良県の国宝・世界文化遺産「元興寺」で瓦が現存しており、耐久性は折り紙付きと言えるでしょう。
一般的な屋根材とは違い、塗装(塗り替え)などのメンテナンスも必要ない他、耐火性・防水性・遮音性にも優れている特徴があります。
なお、粘土瓦には釉薬をかけて焼き上げる釉薬瓦、釉薬をかけずに焼き上げる無釉瓦があります。
瓦の種類 | 特徴 | 価格相場 |
陶器瓦(釉薬瓦) |
| 6,000〜20,000円/㎡ |
いぶし瓦(無釉瓦) |
| 9,000〜15,000円/㎡ |
素焼き瓦(無釉瓦) |
| 6,000〜10,000円/㎡ |
セメント瓦(コンクリート瓦)
セメント瓦とは、セメントと砂・水などを混ぜて作られた屋根瓦です。
粘土瓦とは違って表面には塗装が施されており、カラーバリエーションが豊富な特徴があります。価格も安いため、高度経済成長期に多く普及した屋根材のひとつです。
ただし、セメント瓦自体は雨水を吸水するので、塗り替えなどのメンテナンスが必要になります。また、セメント瓦の耐久性は陶器瓦などと比較して耐久性が短い傾向にあります。
瓦の種類 | 特徴 | 価格相場 |
セメント瓦 |
| 6,000〜10,000円/㎡ |
コンクリート瓦 |
| 6,000〜10,000円/㎡ |
金属系の屋根材は3種類!迷ったらガルバリウム鋼板がおすすめ!
住宅で使用されている金属屋根は、大きく分けるとトタン・ガルバリウム鋼板・ジンカリウム鋼板の3種類です。
そこでここからは、各種金属屋根の特徴について詳しく解説します。
亜鉛めっき鋼板(トタン)
建築用の金属資材として多く利用されているのが、亜鉛メッキ鋼板のトタン板です。
トタン板は非常に安価で耐食性にも優れているので、明治時代から日本の金属屋根として広く利用されてきました。
瓦屋根と比較すると1/10程度の重量なので、非常に軽量で建物に対する負担も少ないです。また、屋根の重さを削減できるため、耐震性の観点からも効果的な屋根材と言えるでしょう。
一方で、トタン屋根は耐久性が10年程度と短く錆にも弱いです。また、耐熱性や遮音性も低いデメリットがあります。
屋根の種類 | 特徴 | 価格相場 |
亜鉛めっき鋼板(トタン) |
| 5,000〜8,000円/㎡ |
ガルバリウム鋼板
カルバリウム鋼板は、軽量で安価な屋根材として人気を博したトタン屋根に変わって台頭した屋根材です。
軽量で安価な金属屋根としてのメリットは引き継ぎつつ、耐久性が30年以上と非常に長くトタン屋根の弱点を克服した屋根材と言えます。
「断熱材一体型」と呼ばれる裏側に断熱材を貼り付けた製品が主流のため、断熱性や遮音性にも優れている特徴があります。
屋根の種類 | 特徴 | 価格相場 |
ガルバリウム鋼板 |
| 6,000〜9,000円/㎡ |
ジンカリウム鋼板
ジンカリウム鋼板とは、ガルバリウム鋼板とほぼ同等の構成でできたメッキ鋼板です。
名称が異なる理由は、ガルバリウム鋼板が新日鉄住金の登録商標に対し、ジンカリウムはBlueScopeというオーストラリアの会社が取得している登録商標だからです。
なので、基本的な性能で変わる部分はありませんが、国内で販売されているジンカリウム鋼板は「自然石粒付き」の屋根材として認知されています。
屋根材の仕上げに自然石が吹き付けられているので、意匠性が高く塗り替えなどのメンテナンスも必要ありません。
石粒があることで断熱性や遮熱性にも優れている一方で、若干コストが高い傾向にあります。
屋根の種類 | 特徴 | 価格相場 |
ジンカリウム鋼板 |
| 8,000〜23,000円/㎡ |
スレート系の屋根材は2種類!新築で多く採用されている!
スレート系の屋根材には、化粧スレートと天然スレートの2種類が普及しています。
そこでここからは、スレート系屋根材の特徴について詳しく解説します。
化粧スレート
化粧スレートとは、一般住宅で多く採用されている屋根材のひとつで「コロニアル」や「カラーベスト」という商品名で呼ばれているケースもあります。
暑さが5mm程度と薄型の形状をしており、軽量で耐震性に優れている特徴があります。普及している屋根材なので価格帯も安価で施工しやすいメリットがあります。
一方で、衝撃に弱く割れやすい一面もあり、耐久性や防水性が低いデメリットがあります。また、コケやカビなども付着しやすく、一定期間で塗装などのメンテナンスが必要になります。
屋根の種類 | 特徴 | 価格相場 |
化粧スレート |
| 6,000〜8,000円/㎡ |
天然スレート
セメントや繊維素材を加工して製造する化粧スレートに対し、天然スレートは天然の「粘板岩」を加工して作られている屋根材です。
天然の岩石からできているので耐久性が非常に長く、基本的にメンテナンスは必要ありません。また、耐水性・耐火性も高く重厚感があるため、高級志向の方にも向いています。
ただし、岩石なので重量があり耐震性が低く、工事費用が高額になるデメリットがあります。
屋根の種類 | 特徴 | 価格相場 |
天然スレート |
| 10,000〜20,000円/㎡ |
北米で人気な屋根材の種類『アスファルトシングル』も覚えておこう!
ここまでに紹介した屋根材以外にも、住宅で多く採用されているものに「アスファルトシングル材」という屋根の種類があります。
北米で多く普及している屋根材で、ガラス繊維基材にアスファルトを含有してコーティングし、仕上げにスレート砂などを圧着して製造しています。
シート形状なので現場での加工もしやすく、軽量な上に複雑な屋根形状でも施工できるメリットがあります。また、防水性や遮音性にも優れており、価格帯も安く採用しやすい特徴があります。
一方で、水はけの悪い勾配が緩い屋根には向いておらず、経年劣化で表面の砂が落ちてくるため、塗り替えなどのメンテナンスが必要になります。
屋根の種類 | 特徴 | 価格相場 |
アスファルトシングル |
| 5,000〜7,000円/㎡ |
まとめ
今回の記事では、一般的な住宅に採用されている屋根材の種類について詳しく解説しました。
なお、本記事の要約は以下のとおりです。
- 住宅用屋根材は「瓦系」「金属系」「スレート系」の3種類
- 瓦系は粘土瓦とセメント瓦で分類できる
- 金属系はトタンにガルバリウム鋼板、ジンカリウム鋼板に分類できる
- スレート系は化粧スレートと天然スレートで分類できる
- 住宅には北米で人気なアスファルトシングルも採用されている
住宅向きの屋根材にも非常に多くの屋根材があるため、メリットやデメリットを比較する必要があります。
なお、一部の屋根材は工事業者が対応していないケースもあるため、依頼する際には対応状況も確認してみましょう。